口の中に広がる見えない世界

口腔内には、約700種類の細菌が生息しており、そのほとんどが有益な働きをしています。しかし、一部の細菌は歯周病などの疾患を引き起こす可能性があります。
また、歯科医師や歯科衛生士が歯科検診時に行う口腔内の観察やクリーニングなどの重要性にも触れます。口腔内の清潔な環境を維持することは、歯周病や虫歯などの疾患を予防するためにも重要です。
記事では、口腔内の細菌の働きや、口腔内環境を保つためにできることについて詳しく解説し、読者の口腔内の健康についての理解を深めることを目指します。
歯周病細菌が体内に侵入する頻度
歯周病によって歯周病細菌が体内に侵入する頻度については、口腔内の細菌バランスや歯周病の進行度合いによって異なりますが、歯周病細菌が血液中に侵入する可能性があることが示されています。
また、歯周病細菌が血液中に侵入し、菌血症を引き起こす可能性については、研究によって結果が異なっています。一部の研究では、歯周病が菌血症の原因となることがあるとされていますが、その頻度は低いとされています。一方、別の研究では、歯周病が全身の炎症を引き起こすことで、心臓病や脳卒中などの疾患のリスクを高めることが示されています。
https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1902/jop.2000.71.10.1554
上記 論文で
動脈硬化性プラーク中において、歯周病菌の存在が確認されたことを報告しています。
研究者らは、人工弁の置換手術を受けた患者から採取されたプラークの中に、
Porphyromonas gingivalis、
Actinobacillus actinomycetemcomitans、
Tannerella forsythensis
などの歯周病菌が見つかったことを明らかにしました。これにより、歯周病が全身の疾患のリスク因子であることが示唆されました。
この論文は、J Periodontolという学術雑誌に掲載されています。上記のアドレスからアブストラクトや論文の全文を読むことができます。

下記のアドレスからアブストラクトや論文の全文を読むことができます。 https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/ATVBAHA.107.141301
この論文の要旨は、歯周病が全身の炎症を引き起こし、心臓病や脳卒中などの疾患のリスクを高めることを示唆しています。研究者らは、フィンランドの健康調査に参加した5,297人を対象に、歯周病菌に対する免疫反応や内毒素血症(endotoxemia)と心臓病や脳卒中の発症との関連を調査しました。その結果、歯周病菌に対する免疫反応や内毒素血症が高い人ほど、心臓病や脳卒中の発症リスクが高くなることが明らかになりました。

この論文は、Circulationという学術雑誌に掲載されています。下記のアドレスからアブストラクトや論文の全文を読むことができます。 https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0b013e31825719f3
この論文は、アメリカ心臓協会(American Heart Association)から発行された科学的声明であり、歯周病と動脈硬化性血管疾患(atherosclerotic vascular disease)との関連性について、総合的に検証しています。研究者らは、過去の研究を総合的に分析した結果、歯周病と動脈硬化性血管疾患との間に強い関連があることを明らかにしました。さらに、歯周病の治療が動脈硬化性血管疾患のリスクを低減することが示唆されています。